寒菊銘醸と大阪屋酒店のコト

この蔵を形容するときは”彗星のごとく”という言葉がよく似合う。

ここ2、3年であっという間に業界ファンをうならせ魅了したその蔵は奇しくも全国で最も魅力のない市(出典:ブランド総合研究所)にある。

千葉県山武市である。

なるほど。聴いたこともない地名だ。(←失礼)

コロナ禍で苦戦を強いられる日本酒業界の苦戦をものともしないそんな蔵にコロナが落ち着いたころ必ず訪れたいと切に願っていた。そして時は来た。

満を持して久しぶりの出張だ。千葉県であれば久しぶりの出張にはちょうどいい距離感である。

蔵はとても広かった。厳密にいうと敷地がとても広かった。およそ今の生産数量から見ると持て余すサイズ感だった。それもそのはずもともと蔵元の佐瀬氏の酒蔵と親戚の農家が隣接していたそうだ。ぷんぷん漂う地元の名士感。

蔵元の佐瀬社長とご挨拶。専務である奥様も同席。

実は寒菊を取り扱う酒問屋の展示会には若杜氏とラベルのデザインを手掛けるデザイナーが。弊社来訪時にはマーケティング担当の鈴木氏が。そのため社長とは完全な初対面であった。もちろん専務とも初対面だ。

ちょっとした自己紹介の後、社長が一人で蔵の中を案内してくれた。

蔵はWi-Fiなども使い24時間体制で温度変化を見ることができるシステムなど、最新機器と昔ながらの機材が混在しており、いい酒を醸すための優先順位を考えながら少しずつ少しずつ資金投資して言ってる感じがヒシヒシと感じられた。変革期を迎えている蔵特有のそれだ。さらにもちろん口には出しているわけではないが、杜氏さん含め蔵人さんやスタッフさんに「自分たちは市場に求められるいい酒を造っているんだ」という自信や気概が感じられた。この雰囲気も勢いのある蔵特有のそれである。

蔵見学が一通り終わると応接間に戻り専務が合流され、今の現状や今後の展望などを聞くなどしてお二人と話すことおよそ2時間。この蔵になぜこんな勢いがあるのかが端々に感じられた。細かいところではいくつかあるがあまりにも長くなりそうなので割愛する。

大きく1にまとめると。

佐瀬社長・佐瀬専務・マーケティング担当・杜氏、この4人の歯車が恐ろしいほどにうまく噛み合っている。

ここが実に大きいと感じた。かなり密にコミュニケーションを取り合い意識共有し、お互いを尊重、信頼し、役割をしっかり理解して連携をとっている。それが証拠に蔵の方針や目標や想いなどを聴きに千葉まで行ったが、社長から聞くことはすでにマーケティング担当の鈴木氏から聞いた話がかなりあった。マーケティング担当の鈴木氏は東京に常駐している。彼はもともと大手百貨店の酒売り場のバイヤーであった。恐れずに言わせてもらえば、通常、寒菊銘醸ほどの小規模の蔵でマーケティング担当がいるなんて話は聞いたことが無い。それでもこの蔵にはマーケティング担当が必要なのだ。聴くと二人は毎日のようにズームや電話で2時間以上話をするほどコミュニケーションを取り合っているようだ。さらに鈴木氏は滅多に蔵に顔を出すことはないそうだ。なんでも社長自ら「ここ(山武)にいると東京の肌感やトレンドの感覚が鈍るから蔵にはなるべく近寄るな!」と言うそうだ。奇しくもコロナ前からリモートワークを実践していた唯一の蔵であろう。ともあれそれだけお互いのことを信用しているのだ。

杜氏は元飛行機整備士という異色の経歴である。だがよくよく考えれば合点がいく。それもそうだ。飛行機はネジのゆるみ一本でも大事故につながりかねない。数百人の命を預かっていると言っても過言ではない超重要な仕事である。そこが杜氏という丁寧なで精密な仕事を必要とされる職種に合っていたのだろう。(野球がうまい人はゴルフもうまい的な?)

そんな4人がいい意味でお互いが並列関係となりお互いの気持ちがぶつけあえる環境を作り出していた。

そんな寒菊からこれからも目が離せない。

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右:佐瀬専務 中央:佐瀬社長

:年末に出る限定酒。地元の有名ガラス工房とのコラボ商品。

:ピカピカの麹室

:酒の命を育む酒母室

大阪屋酒店オフィシャルサイト

1923年創業の吉祥寺でこだわりの日本酒、本格焼酎、ワインを中心に販売しております。 お酒の楽しさ、お酒がつなげてくれる人と人、 生活の中にお酒があるということの豊かさを伝えていくために日々努力しています。 更に願わくば蔵元が丁寧に丁寧に想いを込めたお酒を飲んでいただければ幸いです。

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