新藤酒造店と大阪屋酒店のコト

 

嗅覚と記憶は直結していると言う。この蔵の重い扉を開けると鼻孔に大木のように入る鮮烈な吟醸香。

この香りをかぐと新藤酒造店で過ごした時間や思い出が一気にフラッシュバックする。

 酒屋になった一年目の冬、前社長の父より一週間の研修命令が下された。行く先は父が当時、特に目をかけていた『雅山流』を醸す、山形県は米沢市の新藤酒造店。

 この蔵に入った時の何ともいい香りはどうしても頭から離れない。青りんご、ライチ、パイナップルを彷彿とさせる何ともトロピカルな香りに、日本酒蔵ではなくジュース工場に研修に来てしまったのではないかと思った(それは嘘)。

 しかし新藤酒造店でのそれは当時圧倒的に日本酒リテラシーの低かった私にそれくらいの衝撃を与えたということだけは確かだ。

「これが米と水から産まれる香りなのか!?」


その仕事はぶりは今思い出しても論理的かつ丁寧そのもの。

機械の方が正確で丁寧であれば機械を存分に使い、人にしかできないところは徹底的に人力を駆使していた。新藤社長自身も機械ににめっぽう強く、より使いやすいように自分でシステムを組んで装置を作ってしまうほどだ。

蔵人も若く、女性も積極的に登用し笑顔で躍動しながら酒造りに勤しむ姿にこの蔵の明るい未来を感じずにはいられなかった。

新藤酒造店は本醸造酒であっても吟醸造り。じっくり低温で発酵させて酒ができたらすぐ瓶詰。フレッシュさを保つために妥協を一切許さなかった。

機械と人力とのバランス、蔵人の若返り、フレッシュな酒造り。

今思えば、現在当たり前に全国の蔵元が採用していることを10年以上も前からすでに新藤酒造店では採用していたように思う。


ついでに言うと輸出に関しても早かった。当時の専務であった新藤雅信氏はすでに国内で大きく評価をされ、雅山流の生産数量も徐々に増やしていたにもかかわらず、すでに海外を視野にこのころから輸出のルートを着々と増やしていた。研修中も何人かの中国人のインポーターが視察にして酒造りを体験していた。


そしてこれはどこの蔵元に行っても感じるが、とにかくキレイだ。使った道具なども含めて本当に清潔に管理されている。それはこの蔵でその答え合わせができた。なぜなら午前は仕込みでバタバタと忙しいが、午後はほとんど掃除をしているからだ。定期的な醪管理や明日の仕込みの準備などあるものの、基本的にはずーーーーーーっと掃除をしている。

仕込んで掃除・・・仕込んで掃除・・・仕込んで掃除・・・

この淡々とした仕事を額に汗しながら黙々とこなす大人たちの姿は色気すら感じる。


ここでの経験は私にとって酒造りの楽しさ、過酷さ、難しさ、愛おしさ、口では言い表せないような様々なものを教えてくれた。

今後も新藤酒造店の躍進から目が離せない。


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:新藤社長(日本酒専門の写真家との撮影風景)

:雪と戯れる蔵人たち

大阪屋酒店オフィシャルサイト

1923年創業の吉祥寺でこだわりの日本酒、本格焼酎、ワインを中心に販売しております。 お酒の楽しさ、お酒がつなげてくれる人と人、 生活の中にお酒があるということの豊かさを伝えていくために日々努力しています。 更に願わくば蔵元が丁寧に丁寧に想いを込めたお酒を飲んでいただければ幸いです。

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