黒木本店と大阪屋酒店のコト
実家の酒屋に戻ってすぐのこと。
社長である父から出張を命ぜられる。
「黒木本店で研修してきなさい。」
黒木本店と言えばあの『百年の孤独』や『中々』、『きろく』など、
数々のヒット作を生み出しているスーパー蔵であり、
大阪屋酒店にとってもなくてはならない柱蔵の一つである。
2000年初頭、空前の焼酎ブームであった。猫も杓子も『焼酎、焼酎、焼酎』。弊店も早い段階から様々な焼酎を取り揃えていたこともあり、ご多分にたがわずその波にのっかっていた。そんな私は当時は高校生で年末になるとここぞとばかりに労働力として駆り出された。その時、お酒のことを何一つ理解していない私でも感じた。うちはすさまじい繁盛店なのだと。
特にその渦中にいたのが黒木本店であった。倉庫の奥に隠すように置かれ馴染み顧客にしか売ることのできないその焼酎は私の目から見ても異様であり、同時に魅力的に見えた。なぜそんなに求められるのか。
そんな経験もあいまって自分自身も興味があった。
業界でも市場でも一目置かれるスーパー蔵をこの目で見てみたい。
出張期間はなんと今までの最長の二週間という研修期間を与えられ宮﨑に飛んだ。
高鍋という劇的に田舎の駅から歩いて20~30分のところに黒木本店がある。
タクシーを使わなかったのはずいぶんと早くついてしまったからと、街の風景を見てみたかったため・・・。いやホントに・・・。
実際、蔵に付くと本当に立派だった。外観はいたるところに遊び心とセンスがちりばめられてる。これが日本でトップクラスの焼酎蔵か。それが疑いようのない事実であることを到着してすぐ確認できた。外観とは裏腹に蔵内に関しては合理的そのもので造りにおいて蔵人が働きやすいであろう無駄のない導線が敷かれていた。社員教育も行き届き、蔵人に会うたび立ち止まって挨拶された。
か、完璧だ。
ここで自分が過ごした濃厚な2週間をすべてお届けすると読者は泡を吹いてしまいそうなので、総じて感じたことを書いていこうと思う。
二週間はとにかくアッという間に過ぎた。
『原料生産』、『酒造り』、『産廃処理』焼酎造りのサイクルで無駄なものを一切出さないという会社経営を”サステナブル”や”エシカル”なんて言葉が浸透するずっと前から取り組んでいる最初の会社だった。
すべての現場を見て自分も中に入って体験させてもらった。
会社の運営はもちろん社員教育も素晴らしかった。
社員全員でのご近所掃除、朝礼でのその日の作業や意思の確認。黒木本店の社員専用のハンドブックの読み合わせ。蔵内の徹底した掃除。事務をこなす方たちの丁寧な電話対応。統制が取れつつも従業員の皆さんが楽しそうにやりがいをもって造りや業務に打ち込む姿に当時26歳の私はつきなみだが”感銘”の一言しか浮かばなかった。
ちなみにこれらの内容は社是なども含め、弊社も今でも参考にさせていただいている。
現社長のお父上である黒木会長と同級生で工場長の角上工場長の指揮のもと、素晴らしい組織が、素晴らしい焼酎をつくりだすことはよもや当然だったのかもしれない。
焼酎ブームは確かにたくさんの蔵に大きなチャンスを与えた。しかしブームいずれ終わる。その間に的確な投資をし、合理的な仕組みと強い組織を作り上げた黒木本店だからこそスーパースターになったのだと。ブームはただのきっかけに過ぎず黒木本店はスーパースターになるべくしてなったのだ。
高校生の時に感じた答え合わせができた気がした。
今はご子息である黒木晋作社長が後を引き継ぎあたらあしい価値の創造に取り組んでいる。今後の黒木本店も注目せざるをえない。
そんな一流の蔵が造る一流の焼酎をぜひ飲んでいただきたい。
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:現 黒木敏之会長
左:黒木敏之会長
右:黒木晋作社長
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